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SEIKO YAMAMOTO
鉄の幽体性
2017
サイズ:3650mm×2300mm×554mm
素材 : 鉄、ファンデーション、他
一般的に鉄は、「硬くて強い、人工物」というイメージだが、
私には、液体のように不確かで魅惑的な素材だ。
普段目にするときは、工業製品として、規格サイズに整えられてこそいるが、青黒い皮膚はどこかあたたかく、雨に当たれば一瞬で黄色く錆び、その風合いは、もともと鉱物であることを強く感じさせる。
溶断するときには激しい熱とともに、なんの感触も、なんの抵抗も無く切れていき、
溶接するときには強い光と鈍い音と共に、にゅるりとした、かさぶたになる前の感じがウメウメと起こり、言葉で表すと「肉体」に近い表現になる。
一方で削るときには鋭く火花を散らし、腕に振動を与え、
叩くときには、頭を突き刺すような音と圧倒的な硬度で私を跳ね返す。
そして作業中はどうしても危険な工具を多く使い、
ややトランス状態になるからか、
そこから醒めたとき、
作業中の鉄との関わりのことは、
他の記憶のようには、残っていない。
今回、化粧品会社ポーラとの出会いを通じて、
「化粧」の語源が「気配」であること、
またベールを施すファンデーションには、変容し酸化鉄となった顔料が含まれることを知った。
鉄分としては、血液中を流れ動物の栄養素となり、
皮膚を介して身体の内外をも透過するかのように私たちと共に存在するのだと思うと、まるで運命のようなつながりを感じた。
次々と変容する鉄の幽体性。
それは化粧のもつ神秘性にもつながるような気がする。
Iron as a Phantom
2017
Size : 3650mm×2300mm×554mm
material : Steel, Foundation powder, etc
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